4歳の息子の私という王様ソファ。
夕食後にリビングで仰向けになりながら両手の指を交差させてそのまま腕をぐうってやる。
ぐうって伸ばしてやると腋から二の腕あたりの筋が伸びて伸びて、それがすごく気持ち良いし疲れもとれる気がする。頭上で海老反りになった指たちもさらにぐいぐいしてやるとイタギモチーって喜んでる。それから右足の膝が床に付くくらいに腰をぐいっと捻ってやり、そのまま上体も反対方向にううって声が漏れるくらいに捻ってやる。
はあぁ。
捻って伸ばして捻って伸ばしてを繰り返したあと、ああ、疲れたってうつ伏せになって顔は顎だけ床に乗せてボーッとする。これも良い。
そのあいだ、私の隣でひとりあそびをする息子を横目に、よくもまあそれだけ朝から晩まで遊べますねーって感心しながら眺める。良い光景。ああ、ようやく一日が終わる。このままもう寝てもうたろかしらんとも思います。
でも、そんな時にこの姿勢は危険。
リラックスするのはまだ早い。
隣には息子がいる。
殺気を感じる...
あたり。
突然これがやってくる。
頭からお尻にかけての曲線上、小さなお尻を乗せるにはちょうど良いのか。躊躇なく座りに来る。しかもめちゃくちゃ痛い。ほんとにダメだよ。ほんとに危ないから人の腰に座っちゃだめだよって言ってるのにゲラゲラ笑ってる。いつか骨が折れちゃうかもしれないからほんとやめてねって強めに注意しても乗る強度が多少ましになっただけで聞いてない。聞いてないから同じことをもう一度言ってはみるけれど、首が回らないから息子がどんな顔で聞いてるのかわからない。
そんな息子のどすんがやってくると反射的に膝から下があがる。するとあがった足の裏に何かが乗っかってくる。息子の頭部。リクライニングみたいになってらくちんらくちん言ってる息子の頭はなかなか重い。もう良い加減にしておくれよとも思うけれど風呂上がりのさらさらの髪の毛でずるりと滑り落ちそうになると、それはそれで上下左右になぜか調節してしまう。そうしてる間にも今度は私の両肩に脚を一本ずつ乗せてくる。これは一体なんなのか。
はい。これは王様ソファです。
なんか偉そうだなと思ってそう呼んでる。
いつ考えられたものなのかはわからないけれど、どすんどすんやっているうちに完成しました。痛いけれどちょっと感心してしまう私も私。それにしても親に対してなんていう姿勢を、そういう気持ちもないことはない。
けれど、それを許容してしまうのはそのあとに続く息子式マッサージのため。息子がしてくれるのはいわゆる足踏みマッサージで、体重16キロの4歳児に肩甲骨あたりをぐいぐい踏みつけてもらうとちょうど大人の指圧くらいになって、そのほどよい加減がなんとも言えずやみつきになってしまう。
肩甲骨を踏み踏み、つぎは肩をごりごり。どうもありがとうとおこづかいでも渡してやりたくなるくらいに気持ちが良い。ときどきその小さな足が腰のあたりをぐりんとやりにくることがあるので悶絶することもあるけれど、最近はそれなりに上達したようで素早く済ませて「はい。おわりー!なんかちょうだい。」と見返りを求めてきたりもする。
息子のどすんからの王様ソファ、そして運がよければ息子からのマッサージ。そこには多少の痛みを伴いはしても、蟻が蝶の幼虫のお尻から出る甘露をもらう見返りとして外敵から守ってやるのと同じように、息子には王様ソファを、そして私には足踏みマッサージをと、互いの利益を追求するなかで阿吽の呼吸のようなものができあがってしまったような気もしないではない。ちょっと違うか。でもそう思い込んでおくことにする。
なので腰にどすんをやめてさえくれればもう最高だしちょうど良い塩梅のその体重の間はしばらくこのカチカチに凝り固まった体に乗り続けてもらいたいし、今日も王様ソファやってくれるとうれしいなあってちょっと思ってる。たのんます。ボキッ
おわり。
リアルでこういうこと言ってると、きもちわるとか吐きそうとか言われるからなるべく言わないようにしてるけどツイッターなら言える。幼虫さなぎ羽化バッタカメムシたまごたまご
— トイトーマス (@toithomasBlog) June 11, 2015