3歳の園児たちに大きな声でうんちって言ったらありがとうって言われたのでなんか複雑だけど喜んでおく事にシタ!
3歳の息子の保育園で【絵本の読み聞かせ】をした時のお話。
これしかないのだ
「保育参観の時におうちで読んでいる絵本を読み聞かせしてもらえますか?」
息子の通う保育園の連絡帳に書かれた先生からのメッセージ。
それは数日後に待ち受ける保育参観に参加する保護者がそれぞれ絵本を持ち寄り数十人の園児たちと担任を含めた数人の先生の前で絵本を読むというもの。
連絡帳には【おうちで読んでいる絵本】と書かれておりますから気が小さい私はまず園児たちや先生に失礼の無い様にちゃんとした絵本を選ばなければいけないと思い下記の様にしてリストを作ってみるのでした。
● 図書館で借りたものではなくちゃんと購入したもの。
● こどもも親も大好きな絵本。
● 絵がかわいい絵本。
● 短いヤツ。
すべてにあてはまる絵本......
やっぱ【うんちっち】でしょ。
即断です。
私が上京したばかりの頃、下の階に住むご夫婦の男の子がかわいくて4歳のお誕生日にと本屋さんで探してプレゼントした事がきっかけで我が子が産まれてからもすぐに購入した私の大のお気に入り。
のはずなのですが、世の中には色んな人が居る。色んな考えが在る。色んな親御さんが居る。すこし下品か。どうしようか。それでなくても普段から他のお母さんやお父さんたちとの交流があまり無い様な我が家からうんちがどうたらという絵本を持っていって園児たちの前で読み聞かせるなんて事をしてしまったら......
けれど別に良いさ!はっ
そう思い直せた私は大好きな「うんちっち」をやっぱり持って行くのでした。
うんちっち!
保育参観当日、いざ出陣!と気合いを入れて3歳の息子と保育園へ向かいます。
「それではみなさん今日はお母さんお父さんが来てくれています。そしてなんとおうちから持ってきた絵本をみんなの為に読んでくれるそうですよ〜!楽しみですねえ〜!」
「それでは最初に柴田(仮名)さん。お願いしまーす!」
そうして【絵本の読み聞かせ】が始まるとトップバッターの柴田さんは何やらごそごそと大きな袋を取り出して「ジャーン!」と言いながら紙芝居を出すのです。
おお!!教室中が響めきます。私もすげえ。と唸ります。
そして紙芝居をセットした柴田さんの「はじまりはじまり〜!」の大きな声に園児たちもパチパチパチ!と手を叩き大喜び。
やがて私の「うんちっち」以外の【読み聞かせ】が終わると
「最後はトイトーマスさん。お願いしまーす!」
と先生に呼ばれ何故かオオトリをつとめる事になってしまった「うんちっち」を私は片手に持ち腰を上げると「は、はい。」と小さく返事をしながら壇上へ向かいます。
ふう〜。と少しだけ深呼吸をしてから
「こ、こんにちは!きょ、今日は「うんちっち」という絵本を持ってきました!」
緊張しながらも「へへっ所詮相手は3歳児。大丈夫!」自身を鼓舞し少し声を震わせながらも大きな声を出すのです。そして他のお母さんたち同様に読み始めに「はじまりはじまり〜!!」の合図さえ言えば園児や先生からのパチパチパチの大きな拍手がもらえるはずなのでそれで何とか私も落ち着けるだろうと思っておりました。
それでは...
「はじまりはじまり〜!!」
大きな声で言いました。拍手!
何この目......
お...おう、そ、そうきたか......
私は出だしから園児と先生から向けられた白目に完全にすべっている事を悟るのですがそれでもここまで来たらやるしかない。どうにでもなれと私は大きな声で続けます。
「むかしむかしあるところに、うさぎのこがいました。うさぎのこはことばをたったひとつしかいえませんでした。それは......」
すると...
突然園児たちはワハハと大声で笑ってくれたのです。
「うんちっちー!おもしろいー!」
「うんちっちー!うんちっちー!」
そんな「うんちっち」を笑顔で連呼する園児たちの顔を見て「やっぱりこういうの好きだよね。」と少し安心した私は次のページを捲り続きを読みます。
「あさ、おかあさんが「ぼうや、おきなさい!」といっても......」
と盛り上げようとさらに大きな声で言います。
すると当然園児たちも...
「ワーハッハッハッハ!」と笑ってくれるのです。
こうして何度かやっていると私が読む文章の終わりには必ず「うんちっち」が付く。という事が分かった園児たちの反応がまた少し変わっていくのです。
「おひる、おとうさんが
ちびすけ、ほうれんそうをおたべ!」
といっても......」
と今度は園児たちが「うんちっち」を大きな声で私に返してくれる様になるのです。
そしてこんなやりとりを繰り返す事が出来た私は本当に白けたらどうしようと冗談抜きで心配しておりましたから園児や先生たちの反応になんだかうれしいなあとなるのでした。
このお話の後半は「うんちっち」というお返事が口癖のうさぎの子が「食べてもいいかい」と聞いてくるオオカミにうっかり「うん(ちっち)」と言ってしまい食べられてしまいます。それを知ったうさぎの子のお父さんはオオカミの所へ行きその大きくなったお腹からこどもを助け出します。その後うさぎの子はそのお返事をやめて【違う言葉】に変えるというお話(オチ)なのです。
そしてとうとうその【違う言葉】が出てくる最後のページ。
「いえにかえると、おかあさんがまっていました。
「ちびちゃん、スープをおたべ!」
うさぎのこはうれしそうにこたえました。
「うん!わあ、これ、すごくおいしいね」
ところがつぎのあさ、おとうさんが
「ちびすけ、はをみがきなさい!」というと、うさぎのこは......」
と少し間を空けて「うんちっち」とまた言うかな?と園児たちの反応を待っていると...
「うんちっちー!」
「うんちっちうんちっち!!」
「うんこ!」
と大きな声で思った通りに返してくるので私は「う〜ん?どうかな?違うんだよね〜。」と首を傾げながら「うんちっち」というセリフではない最後のページを開きながらこう言います。
という風に最後はうさぎの子も「うんちっち」とは言わなくなりその代わりに「おならぶー」とお返事をする。というオチなので私も大きな声でそう言うと園児たちも「ぎゃはははは!」「おならぶーだってえ!」「おもしろーい!」とお話の最後まで盛り上がりその光景を見ながら私はとてもうれしく思うのでした。
最初は緊張したけれど園児たちのその笑顔に救われた私は「これでおしまいです。ありがとうございました。」とゆっくり言いながらぺこりと頭を下げるとパチパチパチと最初には無かった拍手をもらう事が出来ほっと胸を撫で下ろしこうして私の【読み聞かせ】は何とか無事終わらせる事が出来るのでした。
と、思った途端先生が立ち上がり
「ありがとうございました。それでは今から給食でーす。」
と言いながら一斉に給食の準備を始めるのです。
その様子を見て気が小さい私は「食事?うんちっちって言った後に食事ですか?恥ずかしいなあ。」と、この後食事があると知らなかった私はトリで「うんちっち」を調子に乗って連呼してしまった事に少し後悔しはじめてしまい園児たちは多分喜んでくれたと思うのだけれど先生や他のお母さんたちはもしかしたら「食事の前にきたねえなあ。」と思われているのかもしれないなどという不安に襲われ私はさっきまでの何とも言えぬ高揚感などは一瞬で消え失せ途端に落ち込んでしまうのでした......
ありがとう
保育参観から十日以上経った昨日の事。
いつもの様に息子のお迎えに行くと普段あまり接する事の無いお母さんが突然走り寄ってきて「トイトーマスさん!」と話かけてくるので振り返り目を見開いて驚いていると
「実はね、うちの息子が保育参観の時にトイトーマスさんが読んでくれた絵本がすごく面白かったと言ってあれから私にずっと何度も何度もその時のお話をしてくれるんですよ!あまり保育園の出来事とか話してくれないのに。だからすごくうれしかったんです!ありがとうございます!うんちのお話!えっ、うんちのお話ですよね?」
とそのお母さんは多分合ってると思うのですが私の読んだ「うんちっち」のお礼を言ってくれるので
「あ、いえ、...どういたしまして......でもその後ご飯だったみたいで...良かったのか悪かったのか。でもよろこんでもらえて.....えっと光栄です。あとうんちと言うか「うんちっち」の事ですよね?うんち?えっ、ちがうの?」
と突然の事に頭の回らぬ私は何の気の聞いた言葉も返せず、まさか「うんちっち」でお礼を言われるとは思わず困惑してしまうのでした。
という具合に私が保育参観に持っていったこの「うんちっち」の絵本でまさか他のお母さんから「ありがとう。」なんていう言葉をかけていただけるとは思っておりませんでしたからとてもありがたいなあ、やっぱり「うんちっち」ってすごいんだなあとひとり感激するのでした。
うんちっちは名作!
私はこの「うんちっち」の絵本が大好きです。
ビビットな配色も絵もすべて含めて私の中で名作。
こどもも大人も楽しめる絵本だと思います。
【絵本の読み聞かせ】にどれにしようか迷っているお母さん、お父さんがいらっしゃいましたら是非「うんちっち」がオススメです。
でも思ったのとちゃう反応だったとしても一応自己責任でお願いしますね。あと食事前にもお気をつけ下さいませ。おわり