私のブログ

こどもの事とか虫の事とか

親だってこどもに謝るべきだ。

 

「子供って親の言う事どこまでわかってるのだろう?」そんな疑問を3歳の息子を育てながら近頃よく考えます。昔、両親から言われたあんな言葉やこんな言葉を「そう言えばこんな事言われたなあ。」「なんであんなひどい事を平気で言えるのだろう。」と幼いながらに思った事。

【親は何となく言ったつもりでも私は覚えている。そして傷ついているのだ。】のお話。

ソフトボール大会

私が10歳くらいの頃。町内の小学生クラスのソフトボール大会に駆り出される事になった初心者の私は男女混合のチームで和気あいあいとした雰囲気にまんまと飲まれ試合に出る事になりました。一応ひとり練習はしてみるのですがそう簡単にはうまくなりません。そんな私は(他に人が居なかったからなのかどうかハッキリ覚えていないけれど)なぜかレギュラーでレフトを守る事になったのです。そしてこれまた入ったチームが強かった。あれよあれよという間に決勝戦まで行く事になるのです。

決勝戦9回2アウトランナー3塁、1点差。リードする私のチームはこれを防げば優勝です。こんなドラマみたいなシチュエーションの時に限って嫌な事は起こるもので最後の1人を打ち取って優勝のつもりがそのバッターは初心者の私が守るレフトへ弾丸ゴロを打ちやがるのです。捕れるわきゃあないだろ。そう思って私の股間を抜けていく玉を逆さになる景色の向こうに見た時に「やべえ。」となるのでした。

そして試合が終わると上級生の5年生6年生から「ヘタクソ」「お前のせいで負けた」など仲良くやってたはずのチームメートからボロクソに言われ弁当も食べずに私は逃げる様にして帰るのでした。

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何でそんなこと言うの?

家に着くと試合を見にきてくれていた父と母が居間におりそれを見た私は安心感なのか何なのか分からないけれど溢れ出す涙をぐいぐい拭いながらわーっと泣き出してしまったのです。
父が良い。初心者の私の練習に少し付き合ってくれた父の元で泣きたい。そう思った私は走って父の大きな体に抱きしめられてもう一度泣くのでした。

すると泣き崩れる私を優しく抱きしめてくれているはずの父が私にこんな言葉を吐くのです。

「へったくそやなー。お前もうやめろ。お前のせいで負けてもうたわ。あはは。」

その言葉を聞いてカーッとなった私は怒りの感情と悔しい感情全部が溢れ出しました。けれど父よりずっと小さく弱い私はポカポカ父の胸を叩きながら泣くくらいしか出来なかった事を覚えています。

なんでそんな事言うのだろう?母はなんでそんな父を見て何も言ってくれなかったのだろう?そう思いました。

最近になってその話を母にするとこう言っていました。
「泣くあなたを見てお父さんは慰めるというよりは笑いながら冗談のつもりで「へったくそやなー。お前もうやめろ。お前のせいで負けてもうたわ。」と言ったんだと思うよ。あの人はそう言う人。照れてるのかなんなのか分からないけれど「今ココでこの言葉を言わなければいけない。」という所でだいたい言わない人よ。その時だったら「初心者やのに良うがんばったやないか。泣かんでもええ。良うがんばった。」と言うべきなのにねえ。」

それを聞いてやっぱりか。と父の言動の軽薄さにあきれましたが、今となれば父も父で色々と仕事の事や家族の事たくさんの悩み苦しみを抱えていたのかもしれない。そう思い多少は肯定出来る部分もあるのだけれどやっぱり私には所詮は子供のするソフトボールと小さく見ていたからその様な言葉が出てきたと思うのです。

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あなたがやったんでしょう?

3歳の息子にはS君と言うとても仲の良いお友達がいます。私たち親同士は道で会っても挨拶程度の関係なのですが息子たちは本当に仲が良く、とにかくいつも一緒です。

そんなある日、私が保育園のお迎えに行くといつもの様に息子とS君が走りながら私の元へやってきてじゃれあっているので仲がいいねえと隣で帰り支度をしていると突然息子がS君の胸を叩きそして太腿あたりを蹴り最後は両手でS君を突き飛ばしたのです。
お迎えの時間が近いS君のお母さんもすぐ側にいたので私はすかさず「すみません。」と謝った後、息子の叩く蹴るの一部始終をこの目で見ていた私はまだ殴ろうとしている息子を捕まえ「コラっなんでそんな事するの?」と強めの口調で言いムッとした顔をし続ける息子の代わりに隣で泣き叫ぶS君に「ごめんね。」と何度も謝りました。そしてお母さんの元へ行き泣き続けるS君を見て「痛かっただろうな。息子はなんでそんな事するのだろう。」と思っているとだんだん私も頭に血が上ってしまい「ちゃんと謝ってきなさい!ちゃんと謝らないんだったら私は一緒に帰りません!」と言うと息子は涙目になりながらまだ泣き続けるS君の所へ行き「ごめんね。」と小さな声で言うのでした。 

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ごめんなさい

家に帰ってもムッとした表情の息子は夕飯の時もお風呂の時も私に対して「信用の無い顔」を向け全然喋ってくれません。不貞腐れてるのだろう。そう高を括って相手をしない様にしていたのですが普段息子は機嫌を損ねて怒ったりしていてもあまり長続きしない方ですぐに笑い出し遊び出してしまう方なので今回はやけに長いなあと思った私はS君には悪いけれど(ダシに使う様な言い方をして)ここは一応息子の立場になってこう聞いてみる事にしました。
「S君の事叩いたり蹴ったりしたのはいけないけれど、あなたが怒ったのはもしかしてS君が先に悪い事してきたからなの?どうなの?」と聞くとそれを聞いた息子は急に目尻が下がり涙声になると私に体を向け「ぞうだよう。」と言うのです。ごめん悪かった。そう思って「そっか。嫌な事されたから怒って叩いちゃったんだね。」と聞き返すと息子はこう続けます。「S君がブロックでぼくの顔を叩いてきて足で蹴ってきてそれからぼくの作ったひこうきの事へんなのーって言ってきたの!」と涙を浮かべながらわーっと私に抱きついて来るのでした。

3歳の息子が言う事ですからどこまで信用して良いのか正直分かりません。そして自分のこどもだからといって「うちの子がそんな事するはずありません。」という様に間違った信用、あるいは肯定もしたくはありません。

出来る限りは事実に基づいてきちんと向き合いたいと思うのですがその時私の頭の中にあの時の父の言葉が反芻し「今ちゃんと言わなければいけない言葉はなんだろう。」そんな風に思うと今回に限っては涙を浮かべて自分の言葉できちんと訴えてきた3歳の息子を信じても良いのかな?と思い

「ごめんね。」

そう言い息子をもう一度抱きしめ顔を見ると「やっとわかったか。」という表情を浮かべ、その後ニコリと笑顔を見せてくれたので私は続けて

「そうだったんだね。ほんとごめん。でも絶対に叩いたりしたらダメ。叩かれたりしたらヤメて!って大きな声で言えば良いの。やり返したりしたらあなたも悪いんだよ。」

と、そこではじめて息子自身の思いを受け止めたうえで叩いたりした行為への注意もすることが出来たような気がしました。

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信用すること

3歳の息子とそのお友達のやる事ですから今はとても小さな事の様に見えるのだけれどここでこの小さな事に気付けなければこれから先もずっとずっと気付く事無く私は息子の心に平気な顔して傷をつけてしまうかもしれない。そう思いました。そして子供にはちゃんと意思がありますから、どれだけ懸命に教育をしたつもりでもどんなきっかけで何をするか分からないのもまた子供でありそんな子供をどこまで信用してどんな言葉をかけてあげられたら良いのかとても難しいとも思います。

ただ私は父のあの言葉の様に小さな体と頭で悩み塞ぎ込む我が子に向かって一方的に決めつけた愛の無い言葉だけはかけたくないと思ったのです。そしてこれからもー。

「ごめんね。」

親になると子供に向かってなかなか言えない言葉だと思います。威厳が失われるかもしれない。そんな風に考えた事も一度はあります。そして私も親から「ごめんね。」と言われた事はありません。何が正しいのか分からないけれど親も子供も同じ色した心があってやっぱり同じ様に傷付き悲しくなるのだから親だって子供に対して「ごめんね。」と言うべき時もある様に思うのです。